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2021-04-08 (Thu) 17:53

「明日への追跡」「夕ばえ作戦」光瀬龍の名作SFジュヴナイル


このところSF小説ベストテンについて考えておるんだが、時代が変わって御三家の威光が薄れてきたうえ、ゆとり小僧どもが投票するようになると、票がバラけて混沌としてくることだろう。まだそれでも一般小説はましな方で、ジュヴナイルの投票をやろうとしたら、ここ二十年くらいのセカイ系とか異世界もののライトノベルがズラッと上位に来ちゃうんじゃないかしら。僕はライトノベルは好きじゃないし、どちらかといえばアニメに近い分野だと思っているので、小説の範疇に入れたくないんだよね。まあ老害の勝手な思い込みなんだが、はっきり言って老害よりもゆとりの害の方が大きいわけで、先人に敬意を払わないやつに明日はないと言っておこう。と言っているわれわれ老害には、そもそも物理的に明日がないわけだが(笑)。


そんなことはともかくとして、ジュヴナイルのベストテンをやろうとしても、過去の名作が手に入りにいという問題は確かにあるのだな。そして、資料もほとんどないのである。多くの名作が「時代」「コース」に連載されたらしいことは分かっているんだけど、その詳細を調べようとしてもなかなか難しいのだ。旺文社や学研へ行ってバックナンバーを見せてもらえば分かるだろうが、さて残っているかどうか。いっそざっくりと、SFベストセラーズの初期10冊をそのままベストテンに認定した方が早いかも知れない。「なぞの転校生」「夕ばえ作戦」「時をかける少女」と、主なところは入っているわけだしね。「明日への追跡」は第二期に収録されているし、ベストテンに入りそうな作品でこのシリーズから漏れているのは「ねらわれた学園」くらいのものだろう。こんなブログでなんだかんだ言う前に、SFベストセラーズをそのまま再刊したら事が足りるような気がするのだ。


明日への追跡


さて、光瀬龍のジュヴナイルには名作が数多いのだが、最もよくまとまっているのは「明日への追跡」だと思う。光瀬龍は少年少女のキャラ造形が際立っていて、この作品でもヒロイン格で登場するふたりの少女が非常にキュートである。眉村卓の「天才はつくられる」と並んで、僕の小坊時代に鮮烈な印象を刻んだ作品の一つと言えよう。NHKの少年ドラマシリーズで映像化されたことも記憶に新しいところだが(新しくないって)、同じく光瀬龍作品では「その町を消せ!」というドラマも作られた。これは「その花を見るな!」と「消えた町」をミックスしたストーリーである。そして、何と言っても「夕ばえ作戦」、これまたドラマ化されて話題を呼んだ一作だが、僕にとっては特に重要な作品である。というのも、「夕ばえ作戦」の舞台となった町は、僕が二十代から三十代にかけてずっと住んでいた地元中の地元なのであった。


僕が住んでいたのは、廃れてしまった商店街のとある民家(いわゆるしもた家)の二階を貸している、昔ながらの学生下宿だった。昭和も60年代になると、そんなところを借りる学生はほとんどいないので、家賃は格安であった。僕はひょんなことからその下宿屋に流れ着いたのだけど、そこが「夕ばえ作戦」の舞台であることにしばらく気がつかなかったのである。なんでも光瀬龍は、うちのすぐ近所にある洗足学園第一高校(すでになくなったけど)で教鞭をとっていたそうで、そのためか周辺の地理が精密に描写されていて、読んでいると妙な気分になってくる。いろんな事情があって僕は引っ越そうにも引っ越せなくなり、学生じゃなくなってからも十数年間、その学生下宿に「居残り」するはめになった。無茶な話なんだけど、そもそも僕は童顔なので二十歳くらいにしか見えず、近所の人々も僕のことをずっと「大学二年生くらいだろう」と漠然と考えていたようだ。凡百のSF小説よりも、この方がよっぽどSF的な話なのかも知れない。







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最終更新日 : 2021-04-08

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